ストーリー

 村にひとつしかない学校で教職をまっとうし、定年後は慎ましい年金暮らしを送っている73歳のエレーナ(マリーナ・ネヨーロワ)が、病院で突然の余命宣告を受けた。5年に1度しか顔を見せないひとり息子オレク(エヴゲーニー・ミローノフ)を心から愛しているエレーナは、都会で仕事に大忙しの彼に迷惑をかけまいとひとりぼっちでお葬式の準備を開始する。まずは埋葬許可証を得ようとバスで戸籍登録所を訪れるが、中年の女性職員に「死亡診断書がなければ駄目です」と素っ気なく告げられ、元教え子のセルゲイが勤める遺体安置所へ。「息子は忙しすぎて、葬儀だのお通夜だの手配できないわ。私はただ、いいお葬式にしたいだけなの」そう事情を説明してセルゲイにこっそり死亡診断書を交付してもらったエレーナは、戸籍登録所での手続きを済ませたのち、葬儀屋で真っ赤な棺を購入する。
 翌日、ふたりの墓掘り人を引き連れて森の墓地に出向いたエレーナは、そこに眠る夫の隣に自らの埋葬場所を確保する。隣人のリューダに秘密のお葬式計画を知られたのは誤算だったが、すぐさまエレーナの心情を察したリューダは、ふたりの友人とともにお通夜で振る舞う料理の準備まで手伝ってくれた。リューダらが去った後、生前の夫との思い出の曲をかけながら死化粧を施す。
 かくしてすべての段取りを整え終えたエレーナの“完璧なお葬式計画”は想定外の事態へと転がり出すのだった……。